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神戸地方裁判所 平成9年(行ウ)24号 判決

原告

米川仁章

(ほか三八名)

右三九名訴訟代理人弁護士

橋下徹

参加人

速水雅史

(ほか六名)

右四六名訴訟代理人弁護士

樺島正法

被告

宝塚市長 正司泰一郎

右訴訟代理人弁護士

松井幹男

被告

清水住宅株式会社

右代表者代表取締役

清水順一

右訴訟代理人弁護士

佐伯照道

山本健司

主文

本件訴えをいずれも却下する。

訴訟費用は原告ら及び参加人らの負担とする。

事実及び理由

第一  請求(原告ら及び参加人ら)

一  被告宝塚市長(以下「被告市長」という。)が被告清水住宅株式会社(以下「被告会社」という。)に対し、別紙物件目録記載の各土地(以下「本件土地」という。)におけるマンション(仮称宝塚南口マンション)の開発・建築計画に関し、平成八年四月中ころから同九年二月二七日までに、左記のとおり、宝塚市開発指導要綱(以下「要綱」という。)及び湯本地区優良住宅地誘導指針(以下「指針」という。)に従った指導を怠ったことの違法を確認する。

1  被告会社の開発計画が指針四条の湯本地区優良住宅地誘導基準(以下「誘導基準」という。)1(1)に規定される要件を満たさないにもかかわらず、要綱一六条に規定される公共施設設備用地として一三四・六四平方メートルの土地を提供すること及び同二五条一項に規定される住居部分の容積率を二〇〇パーセント以内とすることを免除した。

2  要綱一〇条一項によれば被告会社には宝塚市に対し二三七・六平方メートルの面積の公園を提供すべき義務があるところ、被告会社にやむを得ない事情がないにもかかわらず、一〇九・六七平方メートルしか公園を提供せず、不足した面積について公園の提供に代えて一六八二万二〇〇〇円の公園整備協力金を支払うことを認め、かつ、誘導基準1(1)によれば被告会社は建築物の一階部分から前面道路の境界線までの部分について公園用地のほかに歩道の補完的機能を有する部分を確保する義務があるところ、右公園用地内に歩道の補完的機能を有する部分を含めることを容認して、右義務を免除する行為をした。

3  被告会社が要綱七条二項に違反して、住民に対し形式的、一方的な説明会を二回行っただけで平成九年二月二七日に開発事前協議終結を宣言したにもかかわらず、これを許容した。

4  要綱及び指針の各一条に反し、環境、住民の良好な住宅を破壊し、特定の業者に利益を与えた。

二  被告らに対し、被告市長が被告会社に平成九年二月二六日付けでした前項2記載の免除行為を取り消す。

三  被告会社は宝塚市に対し、本件土地のうち別紙図面のイロハニホヘイで囲まれた部分を贈与し、右土地部分について贈与を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

第二  事実の概要

一  争いのない事実(明らかに争いのない事実を含む。)

1  原告ら及び参加人らは宝塚市の住民である。

被告市長は、兵庫県宝塚市の市長であり、被告会社は本件土地においてマンションの開発、建築を計画している者である。

同市では、市内で行われる開発事業について指導等を行うため、要綱及び指針を設けている。

2  原告らは宝塚市監査委員に対し平成九年三月一九日付け及び同年四月一五日付けで、また、参加人らは同委員に対し平成一〇年二月二四日付けで、被告市長が、本件土地に対するマンションの開発・建築計画に関し、被告会社に対して、平成八年四月中ころから同九年二月二七日まで行った開発指導及びそれに基づく提供公園及び公園整備協力金に関する右事業者との違法・不当な契約の締結・履行、財産の取得・管理・処分を行い、公金の賦課・徴収を怠る事実があるので、地方自治法二四二条によりその監査を求め、右契約締結行為等に対する適切な警告を求めるとの住民監査請求をそれぞれ行った。

3  宝塚市監査委員は原告らの右請求に対し平成九年五月一九日付けで、参加人らの右請求に対し平成一〇年四月二四日付けで、請求が不適法なものであるとする二名の監査委員の意見と、適法なものであるとする一名の監査委員の意見に分かれ、最終的に意見の一致を見ることができなかったため、請求に対する監査の結果については決定し得なかったとする旨の各監査結果を出した。

二  当事者の主張

1  原告ら及び参加人らの主張

(一) 被告会社は、平成八年四月一五日ころ、事前協議申請をすることにより、宝塚市又は被告市長との間で、要綱及び指針に従って同市又は被告市長から行政指導を受ける旨の契約を締結した。

(二)(1) 要綱三一条二項及び指針五条によれば、誘導基準1(1)に規定される「都市計画道路宝塚駅南口線に接する建築物の一階部分は、前面道路の境界線から一・五メートル以上後退すること。後退部分については、歩道の補完的機能を有する、不特定多数の歩行者の用に供することができるものとすること。」との要件を満たさなければ、要綱一六条、二四条及び二五条一項の適用を免除することはできない。

しかるに、被告市長は被告会社に対し、被告会社の開発事業が誘導基準1(1)の要件を満たしていないのに、要綱一六条の適用を免除し、被告会社が一三四・六四平方メートル{=1.7m2×3.6人×(32-10)戸}の土地を「その他の公共施設等の整備用地」として宝塚市又は宝塚市土地開発公社に提供することを免れさせ、また、要綱二五条一項の適用を免除し、住居部分の容積率を二〇〇パーセント以内とすることを免れさせて、要綱に従った行政指導を怠った。

(2) 要綱一〇条一項によれば、同条二項の「やむを得ない事情」がない限り、被告会社は二三七・六平方メートル{=3m2×3.6人×(32-10)戸}の土地を公園として宝塚市に対して提供すべきであるところ、被告市長は「やむを得ない事情」がないのに、被告会社が一〇九・六七平方メートルしか公園用地を提供せず、残り一二七・九三平方メートルについては公園の設置に代えて公園整備協力金を支払うことを認めた。

しかも、誘導基準1(1)によれば、被告会社は九・九一平方メートルの土地を歩道の補完的機能を有する部分に供しなければならないから、右一〇九・六七平方メートルのうち九・九一平方メートルについては要綱一〇条一項による公園の提供と認めることができないはずであり、公園整備協力金の対象面積は一三七・八四平方メートルとなる。そして、本件土地の時価は一平方メートルあたり四〇万円を下回らないから、公園整備協力金の額は五五一三万六〇〇〇円(=40万×137.84)となる。しかるに、被告市長は右九・九一平方メートルを含めて公円の提供と認めたうえ、本件土地の時価を一平方メートルあたり一三万一五〇〇円として公園整備協力金の額を一六八二万二〇〇〇円の支払を受けたのみで、五五一三万六〇〇〇円との差額である三八三一万四〇〇〇円の支払を受けることを怠った。

(3) 要綱七条二項によれば、事業者である被告会社は、説明会等の方法により、事業計画等について利害関係者等と十分協議し、調整を図り、合意に至るよう努めなければならないのに、同会社は、平成八年九月七日及び平成九年二月二三日の二回にわたり説明会を開催したものの工事に関する説明や質問事項に対する明確な回答は行わず、譲歩の姿勢もないまま説明会を終了した。

しかるに、被告市長は、被告会社が形式的で誠意のない協議を行ったことを見過ごし、要綱三〇条に規定する必要な勧告等を行わないなど、要綱に従った行政指導を怠った。

(4) 要綱一条には、市内で開発事業を行おうとするすべての事業者に対し、関連公共施設等の整備に関して協力を求めるとともに、公害の防止及び生活環境の保全に努めることにより、無秩序な市街化の抑制を図り、都市の健全な発展及び秩序ある整備を促進し、もって市民のための良好な生活環境を保全することが要綱の目的である旨が規定され、指針一条には、宝塚・湯本地区優良住宅地段階整備誘導計画の具体化に関して必要な事項を定めることにより、自然と調和した潤いと安らぎのある都市環境の実現及び都市活力の活性化を図り、もって秩序ある快適なまちづくりを推進することが指針の目的である旨が規定されているところ、被告会社の開発事業計画は付近の住宅状況と比較して非常識なものであるのに、被告市長は被告会社に対し、要綱及び指針の各一条に従った正しい行政指導を怠り、被告会社の事業計画を容認した。

(5) よって、原告ら及び参加人らは被告市長に対し、地方自治法二四二条の二第一項三号に基づき、被告市長が要綱及び指針の各条項に基づいた行政指導を怠る事実の違法確認を求める。

(三)(1) 前記(二)(2)のとおり、被告市長が被告会社に対し、「やむを得ない事情」がないのに、一〇九・六七平方メートルの土地を公園として提供し、残りを公園の設置に代えて公園整備協力金一六八二万二〇〇〇円を支払うことを認め、また、被告会社が公園として提供する面積のうち九・九一平方メートルについては、本来、要綱一〇条一項による公園の提供と認めることができないにもかかわらず、これを公園の提供と認めた免除行為は、要綱一〇条及び誘導基準1(1)に違反する行為である。

(2) よって、原告ら及び参加人らは被告らに対し、地方自治法二四二条の二第一項二号に基づき、右免除行為の取消しを求める。

(四)(1) 被告会社は宝塚市に対し、要綱一〇条一項に基づく公園の提供を行う義務があるにもかかわらず、被告市長は公園の提供を求めることを怠っている。

(2) よって、原告ら及び参加人らは、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、宝塚市に代位して被告会社に対し、要綱一〇条一項に定める公園として別紙物件目録記載の各土地のうち別紙図面のイロハニホヘイで囲まれた部分を贈与し、贈与を原因とする所有権移転登記手続を求める。

2  被告市長の主張

(一) 本案前の主張

(1) 原告ら及び参加人らが申し立てた住民監査請求について、監査委員の合議が成立せず、監査の結果が決定し得なかったものであり、適法な監査請求がなされておらず、本件訴えは訴訟要件である監査請求前置の要件を満たしていないから不適法である。

(2) 住民監査制度は、住民による財務監視の制度であるから、その対象は財務会計上の行為に限られるところ、原告ら及び参加人らが申し立てた住民監査請求は財務会計上の行為に関するものではないから、本件訴えは適法な住民監査請求を経ておらず、不適法である。

(3) 原告ら及び参加人らの請求の趣旨一項は、被告市長が被告会社に対する行政指導を怠る事実の違法確認を求めるものであるが、要綱及び指針に基づく被告市長の指導は、地方自治法二四二条の二第一項三号に規定される「公金の賦課若しくは徴収」、「財産の管理」のいずれにも該当しないから、右訴えは不適法である。

(4) 原告ら及び参加人らが請求の趣旨二項において取消しを求める「免除行為」は、被告市長の行政処分に当たらないから、右請求は地方自治法二四二条の二第一項二号の請求の対象とならず、不適法である。

(二) 本案の主張

要綱一〇条一項によって被告会社が公園として提供するものとされる面積は二五〇平方メートル未満であり、同項ただし書によれば当該面積に対応する公園整備協力金の納入をもって公園の提供に代えることもできたが、被告市長は被告会社に対し、同項及び指針の趣旨に基づいて指導、協議を行ったうえで、宝塚市が被告会社から公園として一〇九・六七平方メートルの土地及び公園整備協力金として一六八二万二〇〇〇円の贈与を受け、工事完了検査後に右公園用地について所有権移転登記手続を行うとの合意をした。

また、宝塚市においては、公園整備協力金の算定は、土地の時価ではなく、工業地域を除く市内の市街化区域にかかる一平方メートルあたりの公示価格の平均額に基づいて行っている。

さらに、誘導基準1(1)にいう「一・五メートルの後退部分」とは、公園以外に道路を設けるべきことを定めたものではなく、公開空地を設けるという趣旨であるから、公道に面した公園の一部を歩行者の用に供する公開空地としたことは、何ら不合理ではないし、被告会社に特典を与えるものでもない。

よって、被告市長が行った行政指導は、何ら要綱、指針に違反しない。

3  被告会社の主張

(一) 本案前の主張

原告ら及び参加人らは被告会社に対し、請求の趣旨二項において、被告市長のした「免除行為」の取消しを求めているが、「免除行為」が地方自治法二四二条の二第一項二号の対象となる行政処分であるとすると、処分を行った行政庁でない被告会社は被告たり得ない。

また、単独行為である免除の取消しを求める場合に、行為主体でない相手方が被告となる論拠もない。

よって、被告会社は、右訴えに関する被告適格がない。

(二) 本案の主張

原告ら及び参加人らは被告会社に対し、請求の趣旨三項において、別紙物件目録記載の各土地のうち別紙図面のイロハニホヘイで囲まれた部分の宝塚市への贈与及び所有権移転登記手続を求めるが、被告会社は右土地の部分のうち、要綱に基づいて提供した部分以外の部分について宝塚市との間で贈与契約を締結したことはなく、また、当該部分について贈与の意思告示を強制される法的根拠はないから、右請求は理由がない。

第三  当裁判所の判断

一  被告市長に対する請求について

1(一)  原告ら及び参加人らは、被告市長が被告会社の開発事業計画について、〈1〉誘導基準1(1)に規定される要件を満たさないのに、要綱一六条及び二五条一項の適用を免除して要綱三一条二項及び指針五条に従った行政指導を怠り、〈2〉要綱一〇条一項、誘導基準1(1)に従った行政指導を怠り、かつ、要綱一〇条一項に規定する公園整備協力金の徴収を一部怠り、〈3〉要綱七条二項、三〇条に従った行政指導を怠り、〈4〉要綱及び指針の各一条に基づく行政指導を怠ったことについて、地方自治法二四二条の二第一項三号に基づく怠る事実の違法確認を求めるので、右訴えの適法性について検討する。

地方自治法二四二条の二第一項各号に基づく住民訴訟は、同項所定の違法な財務会計上の行為又は怠る事実を予防又は是正し、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものであるから、同項三号の怠る事実の違法確認請求の対象は、財務的処理を直接の目的とする性質を有する公金の賦課又は徴収若しくは財産の管理を怠る事実に限られ、財務的処理を直接の目的としない事項については、仮に財産的損害を生じることがあるとしても、原則として同号に基づく住民訴訟の対象とはならないと解すべきである。

そこで本件について検討すると、要綱一条には、無秩序な市街化の抑制を図り、都市の健全な発展及び秩序ある整備を促進し、もって市民のための良好な生活環境を保全することを目的とする旨が規定され、指針一条には、宝塚・湯本地区優良住宅地段階整備誘導計画の具体化に関して、自然と調和した潤いと安らぎのある都市環境の実現及び都市活力の活性化を図り、もって秩序ある快適なまちづくりを推進することを目的とする旨が規定されており、要綱及び指針の他の規定には、開発による人口、住宅の過密を防ぐとともに、公共施設、公園、緑地、生活関連施設等を充実させるべく、被告市長において指導ないし協議を行う旨が規定されている(〔証拠略〕)。そうすると、要綱及び指針に基づく行政指導は、当該地区における快適な生活環境の保全を目的として行われるものと解されるから、財務的処理を直接の目的とする性質を有するとはいえない。

また、要綱及び指針に従って行政指導を行うことは、同号にいう「公金の賦課若しくは徴収」にはもちろん、公有財産等の財産的価値を維持、保存する作用である「財産の管理」にも該当しないことが明らかである。

よって、原告ら及び参加人らが右に主張する事実は、地方自治法二四二条の二第一項三号に基づく請求の対象とはならず、右訴えは不適法である。

(二)  なお、原告ら及び参加人らは、被告会社が被告市長との間で、被告会社が本件土地の開発について被告市長又は宝塚市と要綱及び指針に従った開発協議を行う旨の契約がなされたが、被告市長が右契約に反する違法、不当な行政指導を行った結果、要綱及び指針の規定で要求されるよりも少ない面積、金額の公園用地ないし公園整備協力金の贈与契約が締結されたと主張して、被告市長が要綱及び指針に従った行政指導を怠ったこと、若しくは、公園用地又は公園整備協力金を提供させることを怠ったことの違法確認を請求しているようにも解される。

しかし、前述のとおり、要綱及び指針に基づく行政指導は、当該地区における快適な生活環境の保全を目的として行われるものであり、財務的処理を直接の目的とする性質を有するものではないから、仮に、被告会社と被告市長の間に原告ら及び参加人ら主張のような契約が存在したとしても、それに基づく行政指導ないし公園用地等の提供を受けることを怠ったことは、地方自治法二四二条の二第一項三号に基づく請求の対象とはならないというべきである。

2  原告ら及び参加人らは被告市長に対し、要綱一〇条二項に規定される「やむを得ない事情」がないのに、一〇九・六七平方メートルの土地を公園として提供し、残りを公園の設置に代えて公園整備協力金一六八二万二〇〇〇円を支払うことを認めたうえ、同会社が公園として提供する面積のうち九・九一平方メートルについては、本来、要綱一〇条一項に基づく公園の提供と認めることができないにもかかわらず、これを公園の提供と認めた免除行為は、違法な行政処分であると主張して、地方自治法二四二条の二第一項二号に基づき右行為の取消しを求めている。

しかし、同号により取消しを求めることができる行政処分は、前述の住民訴訟の趣旨に照らし、財務的処理を直接の目的とする性質を有するものに限られると解されるところ、要綱及び指針に基づく行政指導は財務的処理を直接の目的とする性質を有するものではないから、仮に原告ら及び参加人らが主張するように、違法な行政指導が行われた結果、公園の提供ないし公園整備協力金の一部が免除されたとしても、当該行政指導は同号に基づく請求の対象とはならない。

よって、右訴えは不適法である。

二  被告会社に対する請求について

1  原告ら及び参加人らは、被告市長が被告会社に対し、要綱一〇条二項に規定される「やむを得ない事情」がないのに、一〇九・六七平方メートルの土地を公園として提供し、一二七・九三平方メートルについては公園の設置に代えて公園整備協力金を支払うことを認めたうえ、被告会社が公園として提供する面積のうち九・九一平方メートルについて、本来、要綱一〇条一項による公園の提供と認めることができないにもかかわらず、公園の提供と認めた免除行為は違法な行政処分であると主張して、被告会社に対し地方自治法二四二条の二第一項二号に基づき右行為の取消しを求めている。

しかし、同号に基づく行政処分の取消しの訴えは、当該処分を行った行政庁を被告とすべきところ、被告会社を処分を行った行政庁であるということはできないから、被告会社に対して免除行為の取消しを求める訴えは不適法である。

2  また、原告ら及び参加人らは、要綱一〇条一項に基づく公園の提供を行う義務があるとして、被告会社に対し、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき同市との贈与契約の締結及び贈与を原因とする所有権移転登記手続を求めているが、原告ら及び参加人らは右法的根拠について何ら主張しないうえ、同号後段に基づく当該行為若しくは怠る事実の相手方に対する請求としては、法律関係不存在確認、損害賠償、不当利得返還、原状回復又は妨害排除の各請求に限定されるところ、右請求は、同号において認められた請求のいずれの類型にも該当しないから、右訴えは不適法である。

第四  結論

以上のとおり、本件訴えはいずれも不適法であるから却下することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 將積良子 裁判官 田口直樹 武宮英子)

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